新型コロナの回復者血漿療法
2020年8月24日、アメリカのトランプ大統領(当時)は新型コロナウイルスの「回復者血漿療法」を緊急認可したことを発表しました。
ただ、その後アメリカでは多くの新型コロナウイルス患者に回復者血漿療法が試みられていますが、成果はあまり出ていないようです。2021年3月2日には、アメリカの国立衛生研究所(NIH)が、新型コロナウイルス患者に対する回復者血漿療法には効果がない可能性が高いとして臨床試験を中止する発表を行っています。
現時点では、中和抗体の力価(有効性)を確認した血漿では有効性が認められるとする報告もありますが、回復者血漿療法による有意の効果を認めていない試験結果が多いようなので、すぐに状況を大きく改善させる特効薬にはならないのかもしれません。
新型コロナ感染者の抗体を利用する回復者血漿療法
感染症に感染すると、病原体となるウイルスや細菌を排除するための抗体が作られます。いわゆる「免疫」ですね。
その抗体(免疫力)によって病原体が排除され、さらに自然治癒力で病原体によるダメージを回復することで病気が「治る」わけです。
その回復した人の抗体、具体的には血液から血球などの成分を除いた血漿を利用する血漿療法や血液を生成して作る免疫グロブリン製剤は以前から行われています。
新型コロナウイルスに感染して回復した人も、新型コロナウイルスに対する抗体を体内(血液)に持つため、その抗体を感染者に取り込ませて利用しよう、というのが回復者血漿療法です。
日本国内の回復者血漿療法
全面的な有効性を確認できているとは言い難い新型コロナウイルス患者に対する血漿療法ですが、国内では2020年から製薬会社が血液由来の抗体(免疫グロブリン)製剤の治験を行っています。こちらは安定した効果を得るために血漿から精製した「高度免疫グロブリン製剤」の形で投与しており、効果が確認できればより有効で扱いやすいものになりそうですね。
また、国立国際医療研究センターも新型コロナウイルスに感染した経験のある人から血漿を採取し治療に使う研究を行っています。2021年3月3日には、抗体の有効性(力価)を確認した血漿を利用する血漿療法の臨床研究を開始することを発表しており、有効性が確認できる条件を絞り込んでいけば有力な治療法として確立できるかもしれません。